オブジェクト　Worksheet

VBA（Visual Basic for Applications）において、Worksheet（ワークシート）オブジェクトは、Excel のワークブック（Workbook）内に存在する各シートを操作するための中核的なオブジェクトです。VBA を用いた自動処理では、セルの操作、データの入力、表示設定の変更など、ほぼすべての処理が Worksheet オブジェクトを介して行われます。

■ Worksheet オブジェクトとは？
■ Worksheet オブジェクトへのアクセス方法
■ 主なプロパティ
■ 主なメソッド
■ Worksheet イベント（イベントプロシージャ）
1. ● 代表的なイベント
■ Worksheet の活用例
■ よく使う定数
■ 注意点とベストプラクティス
■ まとめ

■ Worksheet オブジェクトとは？

Worksheet オブジェクトは、Excel の各シートを表します。Excel ファイル（Workbook）の中には複数のシートが含まれますが、その 1 枚 1 枚が Worksheet オブジェクトです。

ワークシートには、セル、行、列、図形、グラフ、名前定義など多くの要素が含まれます。VBA でワークシートを操作することで、データの入力・取得・加工・出力が可能になります。

■ Worksheet オブジェクトへのアクセス方法

● 1. 現在アクティブなシートを参照

Dim ws As Worksheet
Set ws = ActiveSheet

● 2. シート名で指定

Set ws = Worksheets("売上集計")

● 3. インデックス番号で指定

Set ws = Worksheets(1) ' 一番左のシート

● 4. ワークブックを指定してからシートを取得

Set ws = Workbooks("データ.xlsx").Worksheets("Sheet1")

■ 主なプロパティ

● Name（シート名）

MsgBox Worksheets(1).Name

● Visible（表示・非表示）

Worksheets("Sheet2").Visible = xlSheetVeryHidden ' 完全非表示

● Cells（セルの範囲）

Worksheets("Sheet1").Cells(1, 1).Value = "A1の値"

● Range（指定範囲）

Worksheets("Sheet1").Range("B2").Value = 100

● UsedRange（使用されている範囲）

MsgBox Worksheets("Sheet1").UsedRange.Address

■ 主なメソッド

● Activate（アクティブ化）

Worksheets("Sheet3").Activate

● Select（選択状態にする）

Worksheets("Sheet1").Select

● Copy（コピー）

Worksheets("Sheet1").Copy After:=Worksheets("Sheet3")

● Delete（削除）

Application.DisplayAlerts = False ' 確認メッセージを無効化
Worksheets("Sheet2").Delete
Application.DisplayAlerts = True

● Move（移動）

Worksheets("Sheet1").Move Before:=Worksheets(1)

■ Worksheet イベント（イベントプロシージャ）

Worksheet に関連付けられるイベントを使用することで、ユーザー操作に応じて自動的に処理を実行できます。

イベントは「該当シートのコードウィンドウ」に記述します（例：Sheet1 モジュール）。

● 代表的なイベント

Worksheet_Change：セルの内容が変更されたとき

Private Sub Worksheet_Change(ByVal Target As Range)
    MsgBox "セル " & Target.Address & " が変更されました"
End Sub

Worksheet_SelectionChange：セル選択が変更されたとき

Private Sub Worksheet_SelectionChange(ByVal Target As Range)
    Range("A1").Interior.Color = RGB(255, 255, 0)
End Sub

Worksheet_Activate：シートがアクティブになったとき

Private Sub Worksheet_Activate()
    MsgBox "このシートがアクティブになりました"
End Sub

■ Worksheet の活用例

● 1. データを自動で挿入

Sub InsertData()
    Dim ws As Worksheet
    Set ws = Worksheets("データ入力")
    ws.Range("A1").Value = "社員番号"
    ws.Range("B1").Value = "氏名"
End Sub

● 2. 行ごとに背景色を変更

Sub ColorRows()
    Dim ws As Worksheet
    Set ws = Worksheets("データ")

    Dim i As Long
    For i = 2 To ws.UsedRange.Rows.Count
        If i Mod 2 = 0 Then
            ws.Rows(i).Interior.Color = RGB(240, 240, 240)
        End If
    Next i
End Sub

● 3. 複数のシートを一括で非表示

Sub HideSheets()
    Dim ws As Worksheet
    For Each ws In Worksheets
        If ws.Name <> "メイン" Then
            ws.Visible = xlSheetHidden
        End If
    Next ws
End Sub

■ よく使う定数

定数名	内容
`xlSheetVisible`	表示
`xlSheetHidden`	通常の非表示
`xlSheetVeryHidden`	完全な非表示

※ VeryHidden 状態は、VBE でしか再表示できません。

■ 注意点とベストプラクティス

Worksheets(“名前”) は正確なシート名が必要。不一致だとエラーになります。
UsedRange は目に見えない空白セルを含むことがあります。事前に範囲を明確にしましょう。
シート削除や移動時には Application.DisplayAlerts を使って、確認メッセージを制御するのが安全です。
シート操作をループ処理する際は For Each ws In Worksheets が便利です。

■ まとめ

項目	内容
オブジェクト名	Worksheet（ワークシート）
主な機能	セル操作、書式設定、イベント処理、データ編集など
アクセス方法	`Worksheets("名前")`, `Worksheets(番号)`, `ActiveSheet`, `ThisWorkbook.Worksheets("名前")`
主要プロパティ	`Name`, `Visible`, `Cells`, `Range`, `UsedRange` など
主なメソッド	`Activate`, `Select`, `Copy`, `Delete`, `Move` など
イベント例	`Worksheet_Change`, `Worksheet_Activate`, `Worksheet_SelectionChange` など
活用例	データ自動入力、条件付き書式、シートの動的生成・削除、帳票出力、ユーザー操作に応じた処理の自動化など