組込関数 Len

VBA（Visual Basic for Applications）における組み込み関数 Len は、文字列の長さや変数のバイト数を取得する関数です。最も基本的で頻繁に使用される関数の1つであり、文字列の処理やデータ検証、ループ制御など、幅広い用途で活用されます。

■ 1. Len関数の概要

Len 関数は、指定された変数または文字列の長さ（バイト数）を返します。

文字列に対して使用した場合は、その文字数を返します。
変数（たとえば配列、ユーザー定義型など）に対して使用した場合は、そのメモリ上で使用するバイト数を返します。

■ 2. Len関数の構文

Len(expression)

引数：

expression：文字列、数値、変数、配列、またはオブジェクトなど。省略不可。

戻り値：

指定された対象に応じて、文字数またはバイト数を Long 型で返します。

■ 3. 基本的な使用例（文字列の場合）

Dim str As String
str = "Hello"
MsgBox Len(str)   ' 結果：5（H, e, l, l, o の5文字）

空文字列の場合：

MsgBox Len("")    ' 結果：0

全角文字（例：「あ」）も1文字としてカウントされます：

MsgBox Len("あいう")  ' 結果：3

■ 4. 数値型や変数への使用例

数値に対して使うと、内部的に文字列に変換されたときの桁数が返されます：

MsgBox Len(12345)   ' 結果：5
MsgBox Len(-99.9)   ' 結果：5（マイナス・小数点も含む）

ユーザー定義型に使用

Type Person
    Name As String * 20
    Age As Integer
End Type

Sub TestLen()
    Dim p As Person
    MsgBox Len(p)   ' 結果：22（文字列固定長20 + 整数2バイト）
End Sub

このように、文字列固定長が指定されている場合には、構造体のバイト長としての使用もできます。

■ 5. LenとLenBの違い

VBAには、Len と似た関数に LenB があります。

関数名	返す内容	特徴
`Len`	文字数（= Unicode 文字数）	全角・半角関係なく「1文字=1」
`LenB`	バイト数	文字列は「1文字=2バイト」

例（日本語の全角文字含む）

Dim str As String
str = "あAい"
MsgBox Len(str)   ' 結果：3
MsgBox LenB(str)  ' 結果：6（Unicodeなので各文字2バイト）

※ LenB を使うには、バイトベースの環境（Option Base や Byte 配列など）で有効に使用できます。

■ 6. 応用例

● 入力データのバリデーション

Dim userInput As String
userInput = InputBox("名前を入力してください（10文字以内）:")

If Len(userInput) > 10 Then
    MsgBox "文字数オーバーです。10文字以内で入力してください。"
Else
    MsgBox "入力ありがとうございます。"
End If

● 文字列から末尾のN文字を取り出す

Dim str As String
str = "ABCDEFG"

Dim last3 As String
last3 = Right(str, 3)  ' → "EFG"

ここで Len(str) を使えば、動的に末尾の数を制御できます。

■ 7. 配列やオブジェクトとの関係

● 配列に対しての使用は注意が必要

配列変数に Len を使うと、配列変数そのもののサイズ（ポインタ情報）を返します。

Dim arr(1 To 5) As Integer
MsgBox Len(arr)  ' 結果：4（ポインタサイズ）

要素1つ分のバイトサイズが返るだけで、配列全体の長さを求めるには以下のようにします：

MsgBox (UBound(arr) - LBound(arr) + 1)  ' 結果：5（要素数）

■ 8. Lenの活用パターン

活用場面	内容
入力チェック	文字数制限や空白判定
文字列切り取り	`Left`, `Right`, `Mid` と併用
フォーマット調整	固定長レイアウトへの変換（帳票作成など）
文字列ループ処理	`For i = 1 To Len(str)` で文字ごと処理
バイトサイズ確認	固定長構造体のサイズ確認

■ 9. 注意点

● Null値はエラーになる

引数が Null の場合は、エラーが発生します。

Dim x As Variant
x = Null
MsgBox Len(x)   ' → エラー（型が一致しない）

対処方法（Nz 的な処理）

If Not IsNull(x) Then
    MsgBox Len(x)
Else
    MsgBox "Null値です"
End If

■ 10. 他の関連関数との比較

関数	説明
`Len`	文字数または変数のバイトサイズを返す
`LenB`	バイト数（2バイト文字対応）
`InStr`	文字列中の部分文字列の位置を返す
`Left`	左端から指定文字数分を取得
`Right`	右端から指定文字数分を取得
`Mid`	中間の部分文字列を取得